日本経済新聞社説:農政改革に消費者の視点と経営感覚を(5/11): "農地の貸借を原則的に自由化する農地法の改正案が、衆院本会議で可決された。硬直していた農政の根幹にある農地問題に39年ぶりにメスが入り、企業の農業への参入に道を開くとの期待が高い。ようやく芽生えた農政改革の動きである。大きく育てなければならない。でも、まだまだ問題の本質を理解していないナイーブな国民が多い。いいように騙されて言いくるめられてしまう。利権集団は簡単には死滅しない。本当の戦いはこれからである。
日本の農業は諸外国に比べて生産コストが高く、国際的に価格競争力が劣る。国内農家を保護するため、農産物市場に高い関税で輸入障壁を設けている。このため消費者に届く食料品の価格は高い。"
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耕作放棄地をなくせ
一方、国内の食糧生産は需要に比べて大きく不足している。国民の健全な暮らしに必要な食糧の供給を外国に頼っているのが現状だ。カロリーベースの食糧自給率は約40%と先進国の中で極端に低い。
日本の農政は病んでいる。このまま改革を実行せず放置すれば、国内の農業は衰退し続け、国民の「食」の基盤が危うくなってしまう。農政改革を農家や農協、農林水産省、政界の農林族など一部の農業関係者だけの問題にとどめてはならない。
農政改革は全国民の生活の質と日本の食糧安全保障にかかわる国家的な重要課題である。農業関係者のほか消費者や産業界にも、改革の行方を厳しく監視する責任がある。
既得権益や利権が複雑に絡み合う農政の改革は容易ではない。その難しさは、今回の農地法の改正をめぐる国会での議論に表れている。
改正案を国会に提出したのは農林水産省である。保守勢力の牙城と目される同省だが、組織内には改革に積極的な官僚も一部に存在する。石破茂農相は、これまで活躍の場を与えられなかった改革派を重要ポストに起用し、農政改革の立案を指示していた。農地制度の見直しはその流れの中から出てきたとみてよい。
制度見直しの基本は、農地の「所有」から「利用」に発想を転換する点にある。GHQ(連合国軍総司令部)の指導による戦後の農地解放から続いていた、所有者が耕作者であるべきだという「自作農主義」を改め、農地の賃貸の幅を広げた。
これにより、効率よく農業を営む能力がある人材や法人が農地を借りて、農業に参入できるようになる。高齢化で農作業ができなくなった農家が田畑を農業生産法人などの新たな担い手に貸し出せば、土地の有効利用につながる。
細分化した農地が担い手の元に集まれば、耕作面積の大規模化が可能になる。農作業が効率化し、生産性が上がるはずだ。全国に約40万ヘクタールあり農地全体の約6%を占める耕作放棄地を減らす一助にもなろう。
問題は、やむなく耕作をあきらめた農家ではなく、農地の値上がりや転売を見込んで休耕している所有者が賃貸に応じるかどうかだ。税制面で保有のコストが低い農地が、いずれ宅地や商業地、道路などに転用され、高値で売れるという期待を持ち続ける限り、農家は簡単には土地を貸し出さないだろう。
衆院の審議では与野党の主張で法案に修正が施され、農地の借り手の要件が原案より厳しくなった。農地の所有権の扱いについても、与野党の反対で規制緩和が進まなかった。経営感覚が優れた企業が自ら農地を所有して農業に参入する障壁は、なお大きい。
与野党ともバラマキ
農政改革の実現を難しくする構造的な問題がここにある。一部の改革派の政治家や官僚が改革の種火を生み出しても、国会で骨抜きとなってしまう。自民党も民主党も総選挙を意識し、農業票の獲得のために、規制緩和を嫌う既得権者の農協や農家の意向に逆らいにくいからだ。
現在の自民・民主両党は小規模農家と農協を守る手段で競い合い、農政の基本姿勢にほとんど差はない。現状維持と補助金のばらまきの発想から抜け出ていない。追加経済対策には農林水産関連で総額1兆302億円が積み上げられたが、構造改革とは無縁の項目がずらりと並ぶ。
貿易自由化を前提とするコメの生産調整(減反)見直しも、高まっていた政官界での議論が尻すぼみになっている印象だ。自給率が下がっているのに、農産物の価格を上げるために巨額の税金を投じて減反を続けるのは、本末転倒ではないか。
競争力が乏しく非効率なまま国内農業を守り続ければ、不利益を被るのは消費者である。経済危機への対応という大義名分の下で、官僚と農林族による旧来型の密室の政策立案に逆戻りさせてはならない。
農地法改正だけでは十分な改革ではないが、1つの転機と考えたい。「食」への国民的関心が高まっている今こそ、日本農業の明日を拓(ひら)く農政改革を断行すべきだ。
石破を起用したのは大正解だった。石破一人だけのために自民党政権が続いた方がよいのかも知れない。
2 件のコメント:
昨日の産経のこの記事(紙面だと、こんな下らない記事が一面だった)はひどかったですよ。連載なので毎回こういう記事が載ってて気味が悪いです。多少同感できる記事もあるんですけどね。産経なんてマイナーな新聞はともかく読売や朝日のような大手が変わらないと無理でしょう。
【2030年】第2部 ふるさとはありますか(1)農山漁村から見える未来 日本の食支える「3%」
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090510/trd0905100800001-n1.htm
>地方をないがしろにした都会の生活
>は、近い将来、必ずしっぺ返しを
>食うと思います」
産経はウヨだからしかたがないとしても、アサヒやNHKも同じように既得権集団である「ニッポンのノーソン」の宣伝記事ばっかり。これじゃノーソンに搾取されるばっかりの都市貧民層は浮かばれないわ。この「ノーソン賛美主義」がニッポン国民のマジョリティーだとすると、あまり将来いいことはなさそう。ニッポンは売り。
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